【人タビュー】韓国生活14年目。SAMWOOELECOの藤本征士副会長

▲藤本副会長がSAMWOOELECOのオフィスの入り口でポーズをとっている (写真提供:JK-Daily)


-- 簡単な自己紹介と韓国に来られたきっかけをお聞かせください --

  こんにちは。藤本征士と申します。この前まで韓国村田製作所の社長を務めていましたが、去年SAMWOOELECOの副社長として務めています。私は大阪出身で、村田製作所が私の実家から近いことから、関心を持つようになりここまで歩んでくることができました。MLCC(Multi Layer Ceramic Condenser, 積層セラミックコンデンサ)は村田製作所の主力商品で、世界市場シェア40%(世界1位、2位はサムスン電気)程度を維持しています。5Gのスマートフォンの中におよそ1000個入る大きさ0.4mmX0.2mmの非常に小さな部品であるため、ほぼほこりに似ていると言えるでしょう。(笑)

  SAMWOOELECOは村田製作所の韓国代理店第1号で、従業員は計60人程度となっています。売上は、去年1千億ウォン程度で、5年連続伸びています。村田の電子製品を約90%以上販売しています。

  韓国に来たきっかけは、実は、私は香港に行く計画だったのですが、出国の一週間前に突然会社から韓国赴任を言われて、2007年村田製作所の韓国法人社長になりました。香港は暖かく、冬の服などを処分してしまい、寒いソウル生活で冬の服や装備を買い直したエピソードもあります。(笑)


▲藤本副会長の執務室でJK-Dailyのインタビューに応じている (写真提供:JK-Daily)



-- よく日本と韓国のことを「近くて遠い国」と言われますが、韓国で生活しながら一番驚いた日本との違いがあったら --

  2007年韓国に初めて来たとき、バイクが歩道や横断報道の上をスーッと走り抜けるのをみてビックリしました。日本では想像すらできないことでした。今はだいぶ変わりましたが、そのときはまだ信号をきちんと守らなかったりウィンカーを出さずに車線を変えたりするなど、当時はとても困惑しました。



-- 逆に、韓国が持っている最大の魅力は何だと思いますか –

  韓国人はすべての面においてとても積極的で肯定的な考え方を持っているという点が最大の魅力であると思います。また、日本ではプロセスを重視しますが、結果を重視する韓国の働き文化も挙げられます。上司に指示されたことは、最後まで大変でも何とか結果を生み出す姿に驚いたことがたくさんあります。結果が良くなくても過程が良ければ「頑張ったね」「仕方がない」と評価する日本にとって、こうした韓国の「終盤のどんでん返しの力」は想像もできないほど強力であると感じました。

  日本人の場合、丁寧に過程計画を立てた上で物事を進めるため、過程上できないと判断されれば、敢えて結果まで到達せずに諦める場合がよくあります。私は結構熱い人と言えますが、こうした私の性格からでも韓国人の働くスタイルに魅力を感じるようです。(笑)


▲藤本副会長の執務室でJK-Dailyのインタビューに応じている (写真提供:JK-Daily)


-- 韓国人と一緒に働きながら感じた違いがあれば、お聞かせください --

  代表的に韓国の男性は軍隊に行くため、組織に対する「忠誠心」が強く、上命下服の位階秩序が強いようです。日本より強く残っている儒教文化のせいかもしれません。面白いところは、こうした文化をよく知らずに新しく赴任した日本の社長さんは、韓国社員たちが自分のことがとても好きでよく従うと勘違いし、実はそうではないということに気づき、がっかりしたケースが多いということです。(笑)



-- 韓国がビジネスを行う上で良い環境になるために改善してほしい点があるとしたら --

  ビジネスの面で製品の品質が良く競争力に優れていれば、それほど難しくはないでしょうが、そうでない場合や代替材がある場合は反日感情に振り回されやすいリスクがあるようです。今までいくら友好的な関係を維持していたとしても、不買運動はあっという間に広がるので容赦なしに被害にあう場面がありました。一部の要人による不要かつ不適切な発言などが問題の原因である場合がありますが、ビジネス分野に感情的な要素が反映されると、なかなか対応しにくい。そのような問題が改善され、強固な信頼関係が構築されれば、お互いの経済的発展のためにも大いに役に立つと思います。


▲藤本副会長の執務室でJK-Dailyのインタビューに応じている (写真提供:JK-Daily)


-- 韓国で引退すると言うほど韓国好きと聞いていますが、藤本副会長が抱く韓国への考えについて伺います --

  韓国は成長の過程にいるようです。製品のライフサイクルで例えてみると、成熟期に入ったと言えるでしょう。日本はバブル崩壊後、衰退期に入るかどうかの瀬戸際に立たされている状況であると思います。こうした脈絡では、韓国は面白いことを実現させるのに適した国のようです。日本は、ここ数十年間、物価が上がっていませんが、韓国は15年で何倍も上がりました。それにもかかわらず、消費への情熱は依然として熱い。未来が気になる国だからこそ愛着が湧く国だと思います。



-- 韓国で家族全員と生活していて、特に家族がテコンドー有段者だと聞いています。テコンドーを習うようになった背景についてお聞かせください --

  子供は親といてこそ学び成長し続けられると思うので、単身で韓国に来ることは想像もしませんでした。当然、息子と娘、妻の4人家族で韓国生活を始めることになり、末っ子の息子は、その後韓国で生まれ、今は2男1女の5人家族です。

  長男が日本で幼稚園に通っていた時に空手をしたのですが、当時、日本の館長に韓国に行くことになったらテコンドーを習って日本に戻ってまた空手をやってほしいと言われたことが、長男がテコンドーを始めるきっかけとなりました。空手とテコンドーは似ていますが、空手の主な技は手を活用する突き技で、テコンドーは蹴り技が中心であるため、二つの運動を一緒に身につけると大きな魅力があるだろうという日本の館長のお勧めでした。下の子たちは長男の後を追いかける形でテコンドーを習い、なんだかんだで3人の子供みんながテコンドー有段者となりました。(笑)


▲テコンドーの話で空手のポーズをとっている藤本副会長 (写真提供:JK-Daily)


-- 日本に関心を持っているJK Daily購読者あるいは日本の会社で働いている韓国人職員に自由に一言お願いします --

  いつも複雑な日韓関係の話が出てきますが、そのためか日本人の中にはすべての韓国人が日本が嫌いになっていると誤解する方もいらっしゃると思います。


  日本に対する感情を測定した統計資料によりますと、これは極端すぎる話で、直接韓国人と話をしてみると、日本を本当に敵対的に嫌がる人は見られません。例えば、私は韓国語をそこそこ話せて、アパートの近所の人たちから声をかけられる場面が結構ありますが、反日不買運動などで最悪の状況や日韓関係が非常に良くない時、本当に日本が嫌いなら私に話しかけたくないと思うのですが、全然そうではない。むしろ不便なことはないかと心配してくださる。


  私が何歳まで韓国で生活するかは分かりませんが、反日感情が韓国全体の一般的な話ではないということ、そして逆に、決して日本人皆が韓国に対して敵対的な感情を持っているわけではないということを、ぜひ知らせたいと思います。


▲延世大学で日系企業駐在員を対象にした最高位課程「Gateway to Korea」1期(2016)に参加し、1期会長として受けた功労牌。藤本副会長は当課程の総同窓会長を務めている (写真提供:JK-Daily)

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